2013年春 エステル第16号

『もし一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ、もし一つの部分が尊ばれれば、すべての部分がともに喜ぶのです。』

Ⅰコリント12章26節

ベテスダのY様の変化は劇的なものであった。それまで、Y様の唯一のコミュニケーションの方法は笑顔であった。
言葉も喋れず、身体を自分で動かすこともできない。5年前起こったつらい体験が彼女から能力を奪ってしまったのである。
入所して約4年、昨年の7月の職員報告会を思い出す。前月の指示が守れなかった自分の不甲斐なさに泣く者もいた。
突き付けられていた課題は、「良い人」であることを捨てられるか、というテーマであった。
Y様の部屋に溜まってしまった本の整理方法として、Y様に意思を表してもらおうとの取り組みとして、本を数冊積み上げ、残してほしい本だけ横の箱によける。余計な本は捨てる。という取り組みであった。

「移せなかったら、かわいそうではないか?」「Y様から嫌われてしまうのではないか?」葛藤の中、1ケ月は過ぎ、再決心の時であった。

その後、チャレンジは実施され、Y様の止まっていた機能が動き始めたのである。1ケ月後には、意思表示カードが導入され、Y様の意思が表現されるようになった。時には、外出支援で欲しい本の前で固まってしまい、大泣きをする。思いがけない強いマイナス感情。しかし、マイナス感情を持ち帰ってチャレンジしてもらう。
「良い人」であることを捨てられるか?このテーマに職員も涙した。Y様と共に職員が変化する時であった。
そして、12月中旬、Y様は自分で字を書くようになる。気づけば職員の中に連携が生まれている。共にY様の変化を自分のことのように喜び合い、励まし合う姿。そして、ついに4月3日、その日は来た。Y様が「ウィリアム・モリス(の本)がほしい」と言葉を発した。職員たちはY様と抱き合い喜び、互いに喜びを噛みしめた。

長い道のりであったが、Y様と共に職員も変化した時であった。

「ともに苦しみ、ともに喜ぶ」という体験を職員一同させていただいた。

今日も葛藤しながらもY様と職員の前進は続いているのである。

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